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「『イコノミスト』への寄稿文」 無限の可能性を秘めたAI、K-Contentsと出会うとどうなるか [スペシャリストビュー]

  • 執筆者の写真: MooAm
    MooAm
  • 2月22日
  • 読了時間: 7分

更新日:4月16日

―Harry Hyun (Director & Writer / CEO of MooAm Production)


新たなステージに立つK-Contents

K-Contentsはもはや巨額の投資や有名俳優によってのみ支えられるものではなくなりつつある。小規模の制作会社を運営している立場から、コンテンツ制作環境の変化がいかに急速かを日々実感している。数年前であれば「この規模で海外映画祭に出品するなど不可能だろう」と考えられていたが、今や状況は劇的に違う。その大きな要因の一つがAI(人工知能)の進化である。AIが創作全般を革新し、実験的かつ独創的なK-Contentsを、これまでよりはるかに短期間・低コストで生み出す余地が広がってきた。


コロナ後の映画産業と新たな可能性

韓国映画振興委員会の統計によると、2023年の劇場興行収入は1兆2,614億ウォンにとどまり、2019年比で約65.9%程度である。観客数も同様に55.2%ほどに落ち込み、コロナ前の水準に完全復帰したとは言いがたい。一方で、OTT(Over-The-Top)プラットフォームの隆盛によって消費形態は激変しているものの、依然として制作費や人材面のハードルは高いままだ。そうしたなかで、韓国の映像・放送コンテンツ(K-Contents)はグローバル需要を背景に緩やかに成長を続けている。ただし、パンデミック後は現地化や多様性への要望が一層強まり、海外市場でどう存在感を示すかが大きな課題だ。ここで急速に進歩したAI技術が、大きな突破口になると期待されている。


AIがもたらす制作革命

従来、CG(コンピュータグラフィックス)を用いた作品には莫大な予算と高度な専門スタッフが必要で、数分程度の映像でも数億ウォン規模の費用が発生することが珍しくなかった。だが、生成型AIの登場と急激な進化により、新人クリエイターや小規模プロダクションでも比較的短時間でリアルな映像や音声を生み出すことが可能になった。私たちMooAm Productionのように資金面で限られた会社でも、AIを活用することで想像を超えた品質を実現できる。これにより、大手スタジオや有名監督の独壇場だった国際映画祭に挑戦するチャンスが増えているのだ。


「Tales By AI」で見る新境地

MooAm Productionは20代後半の若いクリエイターを中心とする小規模チームだ。スターキャストや数十億ウォン単位の巨額予算なしで、独自のウェブドラマやショートフォーム映像、インディペンデント映画を精力的に制作し、海外映画祭にも挑戦してきた。なかでも近年進めている**「Tales By AI」**プロジェクトでは、韓国の伝来童話をSFダークスリラーのショートフォームシリーズへと大胆に再構成している。たとえば、詩人Baek Seok(백석)の「Me, Natasha, and the White Donkey」をもとにした短編アニメーション「Tales By AI – Natasha and I」では、従来なら莫大なポストプロダクション費用とセット構築が必須だった映像演出の多くをAIで代替し、わずか2週間ほどで完成させた。通常の2割程度のコストでも、高い完成度を実現できたことは大きな成果といえる。この作品は韓国コンテンツ振興院のAIコンテンツフェスティバルに選定されただけでなく、AI Film Award Venice 2024へのノミネートや米国のNew Wave AI Film Festivalのファイナリスト入りなど、小規模の制作会社では想像しにくかった実績を積み上げた。さらには1人のAIアーティストや若手クリエイターと協力し、3~4人規模でも従来なら不可能だったショートフォームや短編映像を生み出している。AIが創りだす新たな創作生態系は「小さくても世界に通用する」という可能性を確かに示している。


産学連携で広がるAI教育

最近、MooAmはDong-Ah Institute of Media and Arts(ドンア放送芸術大学)と連携し、韓国の伝来童話26作品を生成型AI技術によって現代的に再解釈する大規模プロジェクトを始動した。HeungbujeonやJanghwa HongryeonThe Brother and Sister Who Became the Sun and MoonThe Story of Sim Cheongなど、おなじみの物語を世界市場でも通じるショートフォームシリーズにアップデートする試みである。このプロジェクトは、同大学の映像制作科が採用している**P³BL (Projects, Problems, Products-Based Learning)**授業と結びついており、学生たちはAIを用いた企画から制作・マーケティングまでを一通り体験する。かつては莫大な予算が必要だった作業も、生成型AIのおかげで効率化が進み、短期間でも十分に成果を上げられることを学生たちが自ら証明している。実際、当初は生成型AIに戸惑うかと思われたが、わずか数日で童話をSFやファンタジーに仕立てたり、韓国の近現代文学を映像化したりと、予想以上の成果を生み出す学生が続出している。これは単に技術実験にとどまらず、どのような物語をいかに拡張し表現するかという企画力も問われるプロセスだ。


国内外企業のAI活用とメディア産業への影響

AI導入の動きは教育現場に限らない。CJ ENMの短編映画**「M Hotel」**は6分31秒という短尺ながらAI技術を使ってミステリアスな世界観を描写し、ニューヨークやカンヌを含む各種映画祭で受賞を果たした。従来のAI映像がやや奇抜なグラフィックに偏りがちだったのに対し、「M Hotel」はリアルさやキャラクターの感情表現に焦点を当て、テクノロジーとストーリーテリングの融合に成功した例として高く評価されている。KT(Korea Telecom, transitioning to an AI company)もメディア部門を新設し、映画制作への本格参入を図るとされる。ポストプロダクションやロケーションの一部をAIで置き換えることで、制作費が従来の3分の1程度まで削減できるとの見方もある。通信企業からAI企業へシフトするKTが本腰

を入れるならば、韓国の映画・ドラマ制作全般に大きな影響を及ぼすだろう。


海外の動向とコスト革命

海外ではLionsgateがAIスタートアップのRunwayと提携し、特殊効果や背景の一部をAIに代行させる実験を行っている。技術的な課題は依然残るものの、低予算のインディーズ制作現場ではすでにコスト削減のメリットが期待されており、近い将来、数分以上の映像を高水準のままAIで処理できるようになると見る専門家も少なくない。


AI導入がもたらすジレンマ

ただし、AIが急速に普及するほど、従来の映像制作スタッフの雇用や働き方には変化が避けられない。CGアーティストやポストプロダクションの専門家の役割再編はもちろん、新たにAIモデルの運用を担う職種も登場するだろう。技術的な進歩を超え、コンテンツ産業全体のエコシステムに大きな波紋を広げる可能性がある。加えて、AI学習のためにインターネット上のテキストや画像・動画を利用することに関する著作権や、公平性・倫理面の問題も深刻化している。MidjourneyやStability AIなどが係争中の訴訟は、最終的な判決如何で業界全体を揺るがしかねないとの見方が強い。差別的なバイアスや文化的偏見を再生産するリスクも無視できず、グローバル市場で評価されるK-Contentsであればあるほど、そうした問題が露呈すれば致命的となり得る。


それでもAIを活用すべき理由

とはいえ、私はクリエイターや学生に対して「AIを臆せず試してみるべきだ」と一貫して勧めている。実際、MooAmの「Tales By AI」シリーズが海外の映画祭で好評を博し、Dong-Ah Institute of Media and Artsの学生らも短期間で高クオリティの作品を仕上げている状況を目の当たりにすると、AIはある程度の直感と練習さえあれば十分に使いこなせる技術だと確信できる。さらに、韓国特有の情緒や物語性は海外市場でも根強い人気を持ち続けており、伝来童話や現代文学をSF、ホラー、ファンタジーなどに巧みに置き換え、AIビジュアルと融合させることで、まったく新しいジャンルの創造も可能だ。海外バイヤーから「馴染みある題材が新鮮な切り口で蘇った」と評価されることは、その証左といえる。


小規模こそ大胆に――AIが開くグローバルへの扉

小さなチームだからといって萎縮する理由はない。MooAmは1人のAIアーティストやクリエイターと組んで、少人数・短期間でも十分な完成度の映像を作る実験を続けている。大胆な挑戦が市場を切り拓くという信念に揺らぎはない。最終的に、AIがもたらす創造性と効率化は、K-Contentsがグローバル市場でさらなる飛躍を遂げるうえで鍵になるだろう。確かに著作権や倫理、データバイアスの問題はますます顕在化し、The New York Times vs. OpenAIのように大規模訴訟へ発展する可能性も否定できない。それでも技術を正しく使い、倫理・法務面で適切に準備を整えれば、AIは極めて有効な武器となるはずだ。大手のCJ ENMやKT、Lionsgateから小規模のMooAmや新興のAI作家まで、多様なプレイヤーがそれぞれのアプローチでAIを導入している今、もはやコンテンツ制作は資本やコネクションだけに左右される時代ではなくなりつつある。優れたストーリーと果敢な挑戦、そしてAIの融合が実を結ぶとき、K-Contentsの舞台は一段と広がるに違いない。



 
 
 

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